目が見えない犬との暮らし~アイコンタクトが取れない愛犬のしつけ、おうち作りやお散歩の工夫~

皆さんこんにちは!ReCheriライターのchiiです。

我が家のミニチュアダックスのウーノちゃんは片目が眼球萎縮症です。もう片方の目は一見異常が無いように見えますが、視力はありません。

ウーノは譲渡犬として迎え入れた子なので、出会った時にはもうこういった状態でした。ウーノの盲目が生まれつきなのか後天的なのかはわかりません。

ウーノの目が見えていないことに気が付いたのは、ウーノを譲渡前のトライアルとして受け入れた日でした。

家具や壁にゴンゴンとぶつかりながら歩いていたため異常に気付き、獣医さんに診てもらったところやはり視力はないとのことでした。

私は目の見えない犬を飼うのは初めてだったので、これからおトイレやマテなどのしつけをどうやって行っていけばいいのか悩みました。

通常の犬のしつけでは「アイコンタクト」が取れる状態なので犬の注意を引くことができますが、ウーノは目が見えないため私の目を見ることができないからです。

何らかの障害や病気によって生まれつき目の見えない子もいれば、病気や老化現象により後天的に目が見えなくなってしまうこともあります。

赤ちゃんの時に迎え入れてその子の目が見えないとわかった時、これからどう接していけばいいのかと飼い主さんは不安になると思います。

また、途中から目が見えなくなってしまった子は先天的に見えなかった子よりも犬自身が戸惑って不安を感じてしまうこともあります。

でも大丈夫!少し接し方に工夫をしてあげれば、犬は安心して暮らすことができます。

今回は犬のしつけにおけるアイコンタクトについて、ウーノのように目が見えない子との接し方のコツなどをまとめてみたいと思います。

「アイコンタクト」とは?

人間でいうアイコンタクトとは、目の表情や相手のうなずき等のしぐさから相手の意図を読み取り、言葉を使わずに意思疎通を図るという意味を持ちますよね。

例えば、ダンサーや役者などのパフォーマーの方々は、相手の呼吸を読み取って息を合わせるためにアイコンタクトはとっても重要です。

しかし、犬のしつけにおけるアイコンタクトは人間のそれとは少し意図が違います。

目を合わせて飼い主の意図を読み取ることは犬には難しいことなので、「目を合わせる」というよりは「飼い主に注目させる→この後の指令を聞く姿勢になる」ということが重要になってきます。

例えば、ワイワイとおしゃべりをしている生徒たちに先生が「はーい注目!」と言うことでシン…と静まり、先生の話を聞く姿勢にするというイメージです。

飼い主に犬が注目して集中することで、飼い主さんの合図や指令を聞ける状態にすることがアイコンタクトの意図になります。

飼い主に注目できるということは、犬と飼い主さんの間に良い信頼関係が築けている証拠です。

聞く姿勢、もっと言えば指示に従う姿勢に準備されているということだからです。ですので、飼い主さんがしつけを始めようとするときにまず最初に行うことは「アイコンタクトが取れるようにすること」です。

アイコンタクトが取れるようになり、飼い主さんを見て集中できるようになった後、マテやオスワリなどの指示を覚えてもらうとスムーズにしつけが入るようになります。

目の見えない子のアイコンタクト

ウーノにマテやオスワリ(我が家ではステイと言っています)の指示をする時、ウーノは目が見えないにも関わらず私の方を見ています。

本来ならば飼い主の目を見て集中するところですが、ウーノはその代わりに私の「声」を見ています。

「ステイ!」と私が指示を出すと、「ステイですか?」というような表情で声のする方に注目します。

目が見える子でしたら、目が合うと「何か?」というような表情やしっぽを振ったりというなんらかのアクションを起こすことが多いと思いますが、ウーノに無言でのコミュニケーションは難しいのでまず名前を呼びます。

「ウーノ!おいで!」というようにまず呼びかけをして、私がお願い事があるということに気付いてもらうのがまず最初に行うことです。

その掛け声を聞いたウーノが足元まで来て、私の方へ集中しているなと確認したら、ステイの指令を出します。

この時、「はっきりとした声で指令を出す」こと、そして「しゃがんでウーノの顔の位置を意識して声をかける」ことにしています。

時々、すぐ隣にいるにもかかわらずウーノが私を見失うことがあります。

これは家の中でも起こることで、私が黙って静か~にしているとウーノは「あれ?消えた?」とでも言いたげに上の方の空気を一生懸命嗅いで私の居場所を探し始めます。私や猫たちとの距離感がわからずにぶつかってしまうこともあります。

ウーノは良い鼻や耳がありますので、私や猫がいることはわかります。しかし、居場所の特定や距離感をつかむのが苦手なようです。家の中では音が反響していたり、屋外では様々な雑音が多くて私の声が届きにくかったりすることが理由かなと想像しています。

ですので、指令をかける時は立ったままではなく「しゃがんで距離感を近く」しています。すぐそばにいることが伝わると、ウーノも集中して「聞く姿勢」になりやすいと感じています。

犬には優れた嗅覚と聴力がある!

ウーノの目が見えていないことを確認した後に獣医さんはこう言ってくれました。

犬はもともと視力に頼っておらず、嗅覚や聴覚が優れている動物です。
知らないところでは戸惑うかもしれませんが、ある程度おうちの中に慣れてくると間取りも把握しますし、鼻先に物が近付く感覚や肉球の感覚を頼って生活できるようになります。

 実際、先生がウーノの視力を調べる時にまず行ったことは、部屋の電気を消して診察台からウーノを降ろし、しばらく歩かせてみるという方法でした。

診察台の下には汚れ防止のためかシートのようなものが敷いてあったのですが、厚さ5㎜程度の薄いシートの段差を感じるとシートの上に上がることをためらっている様子でした。

こんなふうに、ウーノちゃんは目が見えない分肉球や鼻先の感覚が敏感になっていて、私たちからすればなんてことない薄いシートの段差にも気付いて慎重になっています。でも、こうやって自分が安全かどうか1つずつ確認していくことで、ご自宅の中で一人で行動できるようになります。

人間の目の不自由な方も、視力が弱い分聴力が敏感になって、音の反響で他人の動きを感じることができるようになると以前テレビで見たことがあります。

犬もまた同じで、弱い部分を補うかのように他の感覚が強く研ぎ澄まされるようになるそうです。

もともと犬の視力は人間に比べれば大変弱く、平均で0.2~0.3程度しかありません。

そして目の構造も人間とは少し違い、焦点があまり合っておらずぼやけて見えているそうです。

その代わりに、犬は優れた聴覚と嗅覚を持っています。さらに鼻先や肉球の感覚も頼りにすれば、家の中ならあまり補助の必要なく生活することができます。

ウーノも我が家に迎え入れた最初の頃は、いろんな家具や壁(とたまに猫たち)にゴンゴン当たりながら生活していました。

しかし1ヶ月もすると壁やソファーや猫たちの気配を感じて、そーっとそれらを確かめながらウロウロすることができるようになりました。

私が帰宅すると一目散に駆けつけてお出迎えしてくれるようになりましたが、そういう時は感情が爆発して興奮していますので、何回か壁にボンッとぶつかりながら方向転換して駆けつけます。

まっすぐ歩くことができないので、興奮して走ると壁にぶつかってしまうのかもしれません。

これは近くの公園にお散歩に行った時の動画です。

私が遠くから呼び、ちゃんと呼んだ人の元に来るようにする「呼び戻し」の訓練も兼ねたお遊びです。

この動画のように、ウーノは私の元へ蛇行して近付いてきます。

自宅の玄関でのお出迎えもこれと同じように、まっすぐ走ってくることはできません。

特にこの動画は屋外でのことなので私の声が響かない状態ということもあり、何度か名前を呼ばないと私の位置を特定することができないのでしょう。立ち止まっては声の方向や匂いのする方向を探っている様子がうかがえます。

最後に私の元にたどり着いた後はいつも、スマホを持つ手に激突して写真や動画がブレるというのがお決まりのオチです(笑)。

また、ウーノは、日中は私の布団の中でくつろいでいるようですが、ご自慢の嗅覚でちゃんと布団の中に潜り込んでいます。

時々マットレスを干すために立てかけたりブランケットを洗ったりしてベッドルームがすっからかんになる日がありますが、そんな時は「あれ?この辺に布団があるはずなんだけどなあ…?」というようにウロウロしていつもの布団を探しています。

我が家は2LDKの間取りで、リビング、ベッドルーム、トイレ部屋というような配置なのですが、「この部屋には寝る場所があって、この部屋にはトイレがある」というように匂いをもとに間取りも覚えていると感じます。


■猫が消えた…?

ウーノにちょっかいを出して、かと思えばサッとキャットタワーに上ってウーノを観察するオム氏。なんてイジワル(笑)

ウーノはいきなり消える猫の気配にビックリして、上の方の空気をスンスンして猫の行方を追います。ウーノにとって猫たちはいきなり消えるミステリアスな存在のようです。

目が見えない犬への接し方の工夫

我が家に迎え入れてもうすぐ3年になるウーノは、すっかり家の中にも慣れて自由自在にウロウロしています。しかし、この3年の生活の中で「ウーノが苦手なこと」もわかってきて、ちょっとしたことでも工夫してあげる必要がある事に気付きました。

ほんとにちょっとしたことなんです。たとえばご飯をあげる時も、ただ置くだけだとなかなかご飯皿にたどり着くことができなかったり、お散歩のときも通り過ぎる自転車や側溝にヒヤヒヤしたり…

そこで、私が気付いた「ちょっとした工夫」をいくつか挙げてみます。

ご飯皿やトイレには誘導してあげる

ウーノは食いしん坊ガールで、ごはんはいつも飲むように秒でペロリです。

我が家で一番食べることに情熱を持っているため、ごはんの気配がするとソワソワウロウロ興奮気味です。

しかし、ごはんのお皿をそっと置くだけではなかなかたどり着けません。ですので、ここだよ~と言いながら皿を置いた場所の床をコンコンコンと叩くか、鼻先にご飯皿を当てながら誘導しています。

お水の入ったボウルは家の二か所に設置しているのですが、こちらも「この辺かな?」というふうに目星をつけてヨチヨチ近付いた後、鼻先が水やボウルのふちに触れることで確信に変わっている様子です。ウーノは鼻先の感覚を一番頼りにしているのかもしれません。

部屋の模様替えをしない

ウーノが来てから1年後、ずっと使っていたローソファーから座椅子に変えたことがありました。すると、ウーノが大変驚いてウロウロと新しい座椅子を確認していました。

ローソファーはL字型で結構大きかったので、「あれ?この辺でソファーにぶつかるはずなんだけどなあ?」というふうに鼻先センサーをダウジングのように動かしたり、上れると思った場所に何もなくておててが空振りしている様子でした。

私は結構気分で家具の配置を変えがちだったのですが、ウーノが混乱しないようにこれからは模様替えを控えようと思いました。

ある!と思っていたものがなかったり、ないと思っていたものがあったりすると思わぬケガをしてしまう危険があると感じたからです。

また、ごはんを与える位置(ごはん皿を置く位置)やお水のボウルを置く位置、トイレの位置も変えないようにしています。

家具の角にはクッション材をほどこす

家具にぶつかって鼻先や顔をケガするといけないので、もしご自宅の家具で角が鋭いものには赤ちゃん用のクッション材を貼ると安心かと思います。

引っ越し族の我が家は極力家具を増やしたくないため、棚はカラーボックスとテレビ台とお風呂場収納の3つです。ファブリックでできたお風呂場収納はぶつかっても大丈夫そうですし、お風呂場にはウーノはほとんど行くことはないのでそのままです。

この3つの家具のうちカラーボックスだけ角が鋭いので、赤ちゃん用のクッション材を貼ることを検討しています。(ただ、カラーボックスを置いている場所はウーノがあまり通らないところなので、今はまだ様子見をしています。)

ローベッド、ローソファーにする

目が見えていても見えていなくても、高さのあるソファーやベッドは小型犬のケガの原因になる危険性があります。犬の行動範囲内にあるものはできるだけ低い高さのものにするか、ペットスロープを設置すると犬の足腰に安心です。

ウーノは私と一緒のベッドで寝ますので、ウーノが入ってきやすく落ちる心配のないローベッドにしています。それも、すのこにマットレスという「ほぼ敷布団」のようなベッド!

先ほどソファーを座椅子に変えたお話をしましたが、もともとローソファーだったので高さは問題ありませんでした。

しかし、L字型ということや結構なスペースを占領してしたことで、ウーノがなかなか座れる部分にたどり着けず遠回りしてウロウロしている様子を見て座椅子へ変更しました。

座椅子は場所も取らず部屋が広くなったため、ウーノがウロウロしやすくなったと思います。

お散歩の時間帯は通勤ラッシュ時を避ける

目が見えない子は音に敏感なのかもしれません。ウーノは自転車や車の音がすると硬直して動かなくなってしまいます。

これが道路のど真ん中でもフリーズしてしまうのでヒヤヒヤします。

通勤や帰宅の時間帯は人通りも車通りも多く、そしてみんな急いでいるため危険性が高いと感じました。

朝ならほんとうに早朝の静かな時間帯にするか、お昼過ぎだとのんびりゆっくりお散歩ができるため、時間帯を選んで散歩に行っています。

日が暮れてしまうと犬に気付いてもらいにくく、自転車や車が怖いので、私はお昼過ぎにお散歩に行くことが多いです。夏場はお昼過ぎだと暑いので、早朝の時間帯にしています。

歩道のない道や狭い道、横断歩道はワープ(抱っこ)

我が家の近くの道路には歩道がなく、道幅も狭めです。

リードを着けているとはいえ、まっすぐ歩けないウーノがいきなり車に近付いてしまうととても危険なので、歩道がある道まで抱っこして移動します。(抱っこでの移動を私は「ワープ」と言っています(笑))

ウーノは音や風の流れにとても敏感で、自転車の音や車の音、すれ違う人の作る風の流れなどに敏感に反応します。

この「反応」とは、その音や風が安全かどうか確かめるために立ち止まってフリーズしてしまうのです。

これは横断歩道を渡っている時にも起こり、ど真ん中で立ち止まって動かなくなってしまうこともありました。

このフリーズが起こってしまうと、自転車や車を運転する人をビックリさせて迷惑がかかってしまいます。ですので、私は歩道のない道や横断歩道はワープを使います。

幸いにもウーノは小型犬で抱っこをすることができますが、中型犬や大型犬だど女性が抱っこするのはとても大変だと思います。

抱っこが厳しい場合、やはり通勤通学の慌ただしい時間帯は避け、ゆっくりお散歩ができる余裕を持つことが大切かと思います。

お散歩グッズはハーネスタイプとダブルリードがおすすめ!

目が見えない子は急に立ち止まったり、いきなり方向転換をしがちです。そして、段差や縁石などが見えないためぶつかってしまうこともあります。

飼い主さんがコントロールして縁石や車などにぶつからないようにしてあげる必要があるのですが、この時に首輪だけよりもハーネスの方が首に負担がかかりにくくて安心かと思います。

そして、私は念のためにリードはダブルリードのタイプを使っています。

ダブルリードとは、首輪とハーネスの両方を1本のリードで装着することができるものです。多頭飼い用のダブルリードは2頭の犬に着けられるタイプですが、私が使っているのは1頭用のものです。


ハーネスだけにリードを着けているとヌルッと脱げてしまうことがあります。

首輪とハーネスの両方にリードを装着していれば、どちらか片方が外れてしまった時にも脱走を防ぐことができます。

よく人に「本当に目が見えていないの?」と聞かれることがあるくらい、ウーノ自身はお散歩が大好きでガンガン歩きます。

その代りに私がヒヤヒヤすることも多かったのですが、「通勤通学時間帯を避けること」と「お散歩グッズを充実させること」で安心してお散歩を一緒に楽しむことができるようになりました。

週末には車で少し遠くの大きい公園や海岸に行きます。車も自転車もいないので思いっきり走ることができます♪

まとめ

犬は優れた耳と鼻を持っていますので、私たちが思うよりも目が見えないことは苦痛ではないようです。

しかし、途中から目が見えなくなってしまった子は慣れるまで困惑してしまうかもしれません。

でも、大丈夫!飼い主さんが少し工夫をしてあげれば、犬は目が見えなくても安心して暮らすことができます。

目の見えない子に犬にしつけを行う時には、アイコンタクトをしっかり取ることは難しいかもしれません。

ですので、アイコンタクトの代わりに飼い主に集中させて、聞く姿勢にする工夫が必要になってきます。

アイコンタクトが取れない分「犬の顔の近くで声をかける」「指示の前に名前を呼んで注目してもらう」「はっきりした声で指示の言葉を出す」といったことがコツかなと、ウーノとの生活の中で感じました。

そして、「部屋の模様替えをしないこと」や「お散歩は通勤ラッシュ時を避けること」などの少しの工夫で、目の見えない子が安心して暮らすことができます。

目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり、足が不自由だったり、犬にはそれぞれの個性や体質の違いがあります。

できないことがある分、できることの中でめいっぱい楽しく暮らしてほしいなと、スヤスヤ眠るウーノを撫でながらしみじみ思うchiiなのでした。