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愛犬は飼い主の感情に同調する!「犬の共感能力」を知って、愛犬との特別な絆を育もう

犬と女性

悲しいときや落ち込んでいるときに、愛犬がそっと寄り添ってくれた……そんな経験はありませんか?

実は、犬は人に共感する力を持つことがわかっています。

いま以上に愛犬との絆を深め、飼い主も愛犬もともにハッピーな時間を過ごすためにも、犬の「共感能力」について知っていただきたいのでご紹介します。

犬の共感能力についての研究

近年、麻布大学の菊水健史教授らの研究チームが、犬の共感能力について調査するために、飼い主とその愛犬のペア13組の心拍の変動を計測する実験を行いました。

心臓はリズムを刻みながら全身に血液を送り出していますが、このリズムを「心拍」といいます。この心拍は一定ではなく、気持ちの変化に応じて変動します。

研究チームは、この心拍の変動を計測することにより、愛犬が飼い主の短い間の感情の変化を察知し共感することを、科学的に証明しました。

一緒に暮らす期間が長いほど共感しやすい

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実験では、飼い主・愛犬の双方に心拍計を装着し、飼い主には愛犬から見える位置に座ってもらい、「リラックス」してもらうほか、暗算や専門的な文章の内容説明のような心的な「ストレス」を経験してもらいました。

実験中は飼い主・愛犬の心拍を10秒間隔で計測しました。

その結果、飼い主と愛犬のペア13組のうち、一部のペアでは心拍が同じような変化を見せました。

つまり、「リラックス」や「ストレス」など、飼い主の感情の変化が愛犬にも伝わっていると考えられるわけです。

すべての飼い主と愛犬のペアで、心拍の変動が同期化するわけではありませんでした。

そこで、その違いを調べると、一緒に暮らしている期間が長いほど心拍の変動が同期しやすいこと、つまり愛犬が飼い主に共感しやすいことがわかりました。

長く一緒に暮らせばそれだけ絆も深まり、愛犬が飼い主に共感しやすいというのも頷けますね。

メスのほうがオスよりも共感性が高い

今回の実験では、和犬、洋犬、大型犬、小型犬といったさまざまな種類の犬が選ばれましたが、犬種による傾向の差はなかったといいます。

一方で、性別による違いがみられたそうで、メスはオスよりも心拍の変動が同調しやすく、飼い主に対する共感性が高いという実験結果が出ました。

私は現在、オスの柴犬(紅)とメスの秋田犬(巫)と暮らしていますが、「メスの方が共感性が高い」という実験結果に、「なるほど!」と深く納得させられました。

それというのも、パソコンに向かっているときなどに、なにかに対して私がイライラし「あぁ、もうっ!」などと声をあげると、巫は必ず私の方にやって来て、私の顔を心配そうにのぞき込むのです。

そして、私が「大丈夫よ」と声をかけながら撫でると、安心したように足元に寝そべります。

巫を飼い始めるまではオスの飼育経験しかなく、このような行動をとる犬は1匹もいなかったので、当初はとても驚いたものです。

いまは、巫が私の気持ちに共感して寄り添ってくれているのだと思うと、愛おしくてたまりません。

なぜ犬は人に共感し、心を癒すことができるのか?

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犬の人に対する共感や、犬のセラピー効果には、「オキシトシン」というホルモンが関係していると考えられています。

このオキシトシンは「抱擁ホルモン」、「愛情ホルモン」、「幸せホルモン」とも呼ばれ、スキンシップの際に分泌され、相手への愛情を深め、絆を強めるホルモンです。

このオキシトシンについて、同じく麻布大学を中心としたグループが2015年に発表した実に興味深い研究があります。

研究に参加したのは、一般家庭で飼われている愛犬とその飼い主30ペア。

この30ペアのうち、「飼い主をよく見つめる愛犬」、「飼い主をあまり見つめない愛犬」、それぞれのグループについて、愛犬と飼い主の交流がオキシトシンの分泌量にどのような影響を与えるかを調査しました。

飼い主をよく見つめる愛犬のグループでは、30分の交流の後に、愛犬・飼い主ともに尿中のオキシトシンの濃度が上昇していました。

その一方、飼い主をあまり見つめないグループでは、愛犬・飼い主のどちらも尿中のオキシトシン濃度に変化がみられませんでした。

ちなみに、愛犬と見つめあったとき、飼い主の体内のオキシトシン濃度は3倍以上にも増加するそうです。

オキシトシンには心を癒してストレスを緩和し、体を痛みを軽減するといった働きもあり、これこそが犬のセラピー効果の大きな理由と考えられています。

この実験では、愛犬とその飼い主が見つめ合ったときに、飼い主のオキシトシンの分泌が促されるだけでなく、愛犬のオキシトシンの分泌も促されることがわかりました。

このような現象は、人の母子のあいだで確認されていますが、これまでは同じ種の生き物のあいだでだけ起こることだと考えられてきました。

ところが今回、人と犬という異なる種の生き物が見つめあったり触れ合ったりすることでオキシトシンを分泌しあい、絆を深めるメカニズムがあることが、初めて確認されたのです。

これは愛犬と飼い主のあいだに、例えば親子や夫婦といった家族であるというような、非常に強い絆ができていることを意味しています。

これは犬だけが持つ、人との特別な関係で、ほかの動物にはないことです。

オキシトシンを分泌しあうことで強固な絆を作る仕組み──犬が人に共感し、心を癒すことができるのは、この特別な仕組みがあるからだったのですね。

犬が人の不安に共感してしまうと?

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犬は人に共感する能力を持つだけに、飼い主の心理状態は愛犬に大きな影響を与えます。

例えば、愛犬が怖がりで、散歩中に出会う犬や人、すれ違う車やバイクに吠えてしまう……そんな愛犬の「問題行動」に悩まされている飼い主も多いのではないでしょうか。

でも愛犬が吠えるのは、たとえばお散歩中に「向こうから人が来た!うちの子が吠えるかもしれない!」という飼い主の緊張が伝わっているせいなのかもしれません。

飼い主がまず緊張感をゆるめて平常心を心がけると、愛犬が吠えなくなるというケースはたくさんあります。

オスワリやフセなどの指示が伝わらない、これも多くの飼い主が抱えている悩みだと思います。

例えば「オスワリ」という指示を出すときに、「オスワリ、オスワリよ!オスワリしなさい!」などと矢継ぎ早に連呼してしまうと、愛犬も焦ってしまってオスワリができなくなってしまうことがあります。

こんなときも、飼い主自身が焦ることなく落ち着いて愛犬に指示を出すことで、解決する場合がほとんとです。

飼い主の心に同調してしまう愛犬との暮らしのなかで大切なのは、なによりもまず飼い主が自信も持ち、落ち着いて愛犬に接すること。

そうすれば愛犬にも自信と落ち着きが生まれ、多くの悩みが解消されるに違いありません。

まとめ

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飼い主の気持ちを敏感に感じ取り、その気持ちに寄り添ってくれる愛犬。

飼い主にとってとても愛おしい存在であることはもちろん、ただお互いの近くにいるだけで通じ合うことができる、実に心強い存在でもあります。

それは、私たち飼い主と愛犬のあいだに、「抱擁ホルモン」とも呼ばれるオキシトシンの分泌を通して、家族にも似た非常に強い絆が結ばれているためだったんですね。

そんな愛犬との特別な絆を、これからも大切に育んでいただきたいと思います。

■研究についての参考サイトはこちら■
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/sizen/20190719
https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2019/0719_24872.html
https://scienceportal.jst.go.jp/gateway/clip/20190910_01/index.html