【闘病記】急性腎不全を奇跡的に生き延びた猫・ポンちゃんの治療と回復のストーリー【後半】

猫のポンちゃん
闘病記

腎臓の機能が、突然急速に低下する急性腎不全。死に至ることも多いこの病気にかかり、奇跡の生還を遂げた猫・ポンちゃんの飼い主である田村さんへ前後編に分けてお話を伺っています。

前回は、ポンちゃんが発症してから峠を越すまでのストーリーでした。後編の今回は、腎不全の治療と回復の軌跡を追っていきます。

愛猫が急性腎不全に!発症から回復まで2カ月半の実録ストーリー

――「看取る覚悟」と悲壮な思いで愛猫を家に連れ帰った田村さん。そこでポンちゃんは思いがけない生命力を見せます。大好物のツナを少し食べ、自力でトイレに行くこともできました。命の灯を繋いだポンちゃんですが、まだ予断は許さない病状。これから急性腎不全の治療が始まります。

ポンちゃんが奇跡を起こせた理由とは…?

闘病中の猫のポンちゃん

無事峠を越したポンちゃん、治療10日目の通院日を迎えることができました。

4/7 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 158.1mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 8.54mg/dl 0.8-2.4
K(カリウム) 4.3mmol/L 3.5-5.6

急性腎不全の症状にわずかに改善が見られ、合併症を起こしていた肝機能障害はすべて正常値に。腹水もほとんど排出され体重は2.9kgに戻り、皮膚の状態も改善されていました。

ここからが急性腎不全の治療です。医師から提案されたベストの治療法は、経鼻チューブで直接胃に栄養補給をする方法ですが、困ったことにこれには2日間の再入院が必要でした。

田村さん「せっかく家で元気になったのに、再入院がいい選択であると思えなかったので、入院は回避しました。ただ、栄養補給は生命線なので、2日間自力でご飯を食べなかったら入院と宣告されてしまいました」。

その結果、自力ではあまりご飯も水分も摂らず、2日間で体重が2.3kgまで減少。残念ながら経鼻栄養へ移行するための2日間の再入院が決定しました。しかし、血液検査の結果は思った以上の回復を見せていました。

4/9 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 53.5mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 1.88mg/dl 0.8-2.4

ところが、病院に入院して経鼻チューブで栄養を入れ、さらに脱水症状の治療をするも、腎臓の値がこれ以上には良くならないポンちゃん。

4/10 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 54.7mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 2.1mg/dl 0.8-2.4

先生は「おうちが大好きなポンちゃんだから家で奇跡を起こしたものの、今は病院や経鼻栄養がストレスで緊張状態となって、期待したように数値が下がらないのかも」と田村さんの予想と同じ見解を示したとのこと。

さらに先生曰く「ここ1年で診察した急性腎不全の犬や猫は10匹いて、助かったのはポンちゃんを入れて2匹だけ」と。ポンちゃんはおうちと飼い主さんが大好きだったからこそ、奇跡を起こせたのかもしれません。

ポンちゃん、大好きなおうちで療養

闘病中の猫のポンちゃん

経鼻チューブで栄養と水分を管理しながら、ポンちゃんの家での療養が始まりました。キャットタワーで遊びたい仕草をみせるも、体力の衰えとエリザベスカラーが邪魔で思うように遊べないポンちゃん。

田村さん「少しなら自分で水も飲んでフードも食べるのですが、便が出ず悩んでいました。また相変わらずの多飲多尿でこれは急性腎不全の回復期だからなのか、慢性腎不全に移行したのかが判断できず、病院の先生も残存している腎臓の機能がどれほどあるかも含め、もうちょっと経過を見ないと分からないとのことでした」

そんななか、退院4日目にして、くしゃみをしたひょうしに経鼻チューブが外れるというハプニングが!病院からの指示は、そのまま外して明日通院でOKとのこと。久しぶりにエリザベスカラーを取ってもらったポンちゃんは、グルーミングに精を出していたと言います。

次の日、発症から19日目の通院。家で経鼻チューブで管理していたにも関わらず、田村さんの期待ほどは数値の改善は見られませんでした。体重も2.3kgとあまり増えておらず、急性腎不全の猫が体重を増やすことの難しさを実感したのだそう。ここから週に2~3回の皮下点滴をすることになります。

4/16 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 86.5mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 2.1mg/dl 0.8-2.4
Ca(カルシウム) 13.2mg/dl 8.8-11.98
IP(リン) 7.9mg/dl 2.6-6.0

その後風邪で調子を崩すこともあったものの、急性腎不全自体は着実に治っていき、治療28日目には、あと少しで正常値のラインまで数値が改善してきました。

4/25 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 39mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 2.3mg/dl 0.8-2.4

ポンちゃんの腎臓機能がついに正常値に

キャットタワーと猫のポンちゃん

田村さんの出産予定日は6月1日。その日が近づくのに合わせるように、ポンちゃんの体調はよくなっていきました。そして治療36日目の5月3日。腎臓の数値もすべて正常値になったのです!

5/3 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 34mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 1.7mg/dl 0.8-2.4

体重も2.5kgまで増えました。ぶり返すことがないか経過を見守り、あとは最後の精密検査を残すのみ。

5/17 数値 ポンちゃん 正常値
BUN(尿素窒素) 26mg/dl 16-36
CREA(クレアチニン) 1.6mg/dl 0.8-2.4

田村さん「治療2カ月半で病気になる前のコンディションに戻り、急性腎不全のぶり返しも、慢性腎不全への移行もないと診断されました。私の出産が近づくにつれどんどん元気になってくれて、数値も正常になり、体重も順調に増えていたので、本当に安心しました。奇跡の回復を支えてくれた家族や周囲の人々には、感謝の気持ちでいっぱいでした」

現在ポンちゃんは10才。とくに持病もなく元気いっぱいのシニア猫になりました。体重は3.3kg程度をキープしています。

ポンちゃんの数値一覧表(赤文字は正常範囲外)
■ポンちゃんの数値一覧表(赤文字は正常範囲外)

ポンちゃんの数値グラフ
■ポンちゃんの数値グラフ

田村さん「正常値になった後も、5カ月くらいは腎臓サポートのフードを量を計って与え、排尿や排便は細かく記録をとっていました。自分でもよくあんなに看病していたなと思います。幸いその後は異常なく過ごせています。でも、毛並みが元の通りにつやつやになるには2年くらいかかりましたね」。

田村さんの献身的な看病、そして大好きなおうちでの療養の成果で元気を取り戻したポンちゃん。田村さんは、これからも穏やかな日常を一緒に過ごせることを心から望んでいます。

田村さん「ポンちゃんの闘病に関しては、『生き返った』のと同じレベルの奇跡が起きたとしか思えません。でもこういうこともあると知ってほしい。もし今急性腎不全で闘病している猫ちゃんの飼い主さんを勇気づけることができたら嬉しいです」。

銭ゲバポンちゃん
■ペット保険助かったニャ(注:これはクリアファイルの模様です)

猫の腎臓病の新しい治療「AIM」について

いま、猫の腎臓病にタンパク質「AIM」を利用する治療法が開発されています。東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センターの宮崎徹教授が、腎不全の原因を取り除くAIMという物質を発見したのです。

このAIMを猫に投与することで腎不全の進行を抑えられると考えられています。この治療法が確立されれば、猫の平均寿命とも言われる15年を、2倍の30年程度にまで伸ばせるかもしれません。

実用化のための研究が新型コロナウイルスの影響で研究費不足に陥り、中断を余儀なくされてしまったというニュースを受けて、世界中の愛猫家などから2億円超もの寄付が同大学に寄せられました。これをきっかけによって臨床試験に協力する製薬企業も現れ、臨床試験が再開される運びになっています。

実用化されるのはまだ数年先の見通しですが、愛猫家にとって朗報なのは間違いありません。「腎不全は猫の宿命」との定説が覆される日はそこまで来ています。研究の成果を首を長くして待ちたいものですね。

まとめ

猫の急性腎不全とその最新治療法、また実際に急性腎不全から回復したポンちゃんの闘病記を前後編にわたってお送りしましたが、いかがでしたか。ポンちゃんのように急性腎不全から命を繋ぐことのできた例に、勇気づけられた飼い主さんもいるかもしれません。

たくさんの猫が、できるだけ長く幸せな猫生を飼い主さんの側で送れるように、これからの研究の進展に期待をしたいですね。