猫の口内炎に最も効果的!?全抜歯のメリット、デメリット

鳴いている猫

猫の口内炎。症状の程度に差はあるものの、抱えている猫は意外と多く、経験したことがある飼い主さんはそのつらさをご存じかと思います。

我が家の猫も慢性的な口内炎に悩まされており、長期の治療を受けていました。

しかし、思うような改善が見られず、最終的に選択したのは「全抜歯」でした。

今回は、猫の口内炎治療の中で最も効果的と言われる全抜歯について、メリットやデメリット、費用のことから術後の経過にいたるまで体験談も交えつつ解説していきます。

愛猫の口内炎に悩まれている飼い主さんの参考になれば幸いです。

猫の口内炎とは?

威嚇する猫

猫の口内炎は一度発症すると根治は難しく、その理由から「難治性口内炎」と呼ばれます。

はっきりとした原因がわかっておらず、ウィルスや歯周病、免疫異常など複合的な要因で発症するといわれています。

猫の口内炎の症状は?

猫の口内炎は炎症が口内全体、舌、のどまでと広範囲で、強い痛みが伴うのが特徴です。

痛みから、以下の症状がみられるようになります。

・食欲の低下
・よだれが増える
・毛づくろいをしなくなる
・口臭がきつくなる(歯周病要因)
・攻撃的な性格になる、または元気がなくなりじっとして過ごすようになる

猫の口内炎の治療方法は?

猫の口内炎の治療方法は症状に合わせて様々です。

まずは、口内炎の炎症や痛みを抑えるため抗生剤やステロイド剤を用いた投薬治療から始める場合が多いですが、改善は一時的なもので次第に効果が薄れていきます。

歯周病要因の場合は歯石取りを選択することもあります。

しかし、再び同じ位置に歯石がたまるので、繰り返し処置をすることになります。

全抜歯が最も効果的な治療法?

歌う猫とオーディオ

猫の口内炎の治療の中で最も効果があるといわれているのが「全抜歯」です。

全抜歯を行えば口内炎が完治することも珍しくありません。

全抜歯には「全臼歯抜歯」と「全顎抜歯」の二種類があります。

それぞれの特徴やメリット、デメリットをみていきましょう。

全臼歯抜歯

全臼歯抜歯とはすべての奥歯を抜くことです。

口内炎の症状が限定的な場合や、全顎抜歯(次項参照)よりも麻酔時間が短くて済むので、麻酔のリスクを考慮し実施されることがあります。

全顎抜歯

全顎抜歯とはすべての歯を抜くことです。

そのため、全臼歯抜歯よりも高い治療効果が見込まれます。

全臼歯抜歯から始め段階的に全顎抜歯を行う場合もあります。

全抜歯のメリットとデメリット

全抜歯のメリット

全抜歯のメリットはなんといっても治療効果が高いことです。

全臼歯抜歯で60~80%程度、全顎抜歯で70~95%程度改善すると言われています。

症状がひどく、投薬治療で改善しなかった猫に全抜歯を行うことで再びごはんをモリモリ食べられるようになるということも珍しくありません。

また、早い段階で行うことで、治療効果が上がるともいわれています。

全抜歯のデメリット

全抜歯のデメリットは、全身麻酔のリスクがあることです。

その理由から持病がある猫やシニア猫は処置自体受けられないことも考えられます。

また、処置後全く改善が見られないということが5~10%の割合でみられます。

処置を受けてみないとわからないというのが悩ましいところですね。

歯がなくなって、ごはんは食べられる?

フードを食べる猫

全抜歯と聞いて「歯を全部抜いてごはんは食べられるの!?」と驚かれた方も多いかと思いますが、安心してください。

むしろ、口内炎の原因がなくなることで痛みから解放され再びモリモリ食べられるようになることが多いです。

なぜなら、元々猫は食べるときはほとんど丸飲みしているからです。

猫の歯の役割は、咀嚼ではなく、獲物を捕らえたり嚙みちぎったりすることに特化されたものなので、無くても食べることに支障はありません。

全抜歯した我が家の猫も舌や歯茎を上手に使って問題なく食べていますよ。

全抜歯を希望する際の注意点は?

全抜歯を希望する際に注意しなければならないことは「残根」させないことです。

口内炎の改善には歯根(歯の根っこの部分)を取ることが重要とされており、取らない(残根)場合改善は見込めません。

しかし、全抜歯のときに歯根が見過ごされ残根していることが意外と多いようです。

我が家の猫は一度全臼歯抜歯を受けたにもかかわらず改善が見られませんでした。

別の病院で残根の可能性を指摘され、実際に見た目には歯がない部分もすべて残根しており、改めて全身麻酔下での処置を受けることになってしまいました。

すでに全抜歯をしたにもかかわらず改善が見られない場合は、残根の可能性も視野に入れて病院に相談してみてもいいかもしれません。

これから全抜歯を検討している飼い主さんは、処置を受ける前に歯根まで取ってもらえるか(取る技術があるか)、歯科用のレントゲンなど必要な設備はあるか納得いくまで質問するようにしましょう。

全抜歯の費用はどれくらい?

お金が入った瓶と黒猫

気になる全抜歯の費用はどのくらいなのでしょうか。

全抜歯は大掛かりな処置なので、当然ながらそれなりにはかかってしまいます。

全臼歯抜歯で数万~10万円前後、全顎抜歯で数万~20万円前後くらいが目安となりますが、口内炎の状態や処置する歯の本数によって変わってきます。

病院によって料金設定も異なるため、事前に確認しておくようにしましょう。

我が家の猫の場合、臼歯の残根の処置+残りの歯の全抜歯で93,940円でした。

内訳
・診察代 500円
・抜歯(残根の処置含む13本) 49,000円
・血液検査 5,000円
・麻酔 15,000円
・術後の点滴、抗生剤の注射など 9,400円
・入院費(二泊) 5,000円
・処方食・爪切りなど入院中のケア 1500円
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合計93,940円(税込)

全抜歯後の食事はどうするの?

全抜歯直後からモリモリ食べられるようになる猫もいれば、数日入院しながらチューブで流動食を取らないといけないような状態の猫もいます。

術後の痛みが落ち着いたら、やわらかめのウェットフードから始めて、ひと月後にはドライフードも食べられるようになっていることがほとんどです。

我が家でも『CIAOちゅ~る(以下、ちゅ~る)』から始め、ウェットフード、ドライフードと段階的に変えていきました。


焦らず、その時々で猫が食べやすいフードを選んであげてくださいね。

全顎抜歯をした我が家の猫の症状や経過

ソファにあごをのせる猫

続いては、我が家の全顎抜歯の体験談です。

全顎抜歯後、残念ながら完治はしませんでしたが、それでもやってよかったと思っています。

その理由もお話しします。

我が家の猫の口内炎の症状

我が家の猫はもともと外猫で、地域猫として暮らしていました。

衛生面や栄養面の問題で、家猫よりも外猫の方が口内炎を発症していることが多いように思います。

我が家の猫も例にもれず外猫時代からたびたび口内炎の症状で受診し、投薬治療をしていましたが、しだいにごはんが食べられなくなり一度目の抜歯をしたのでした。

その後もあまり改善が見られず、投薬治療を継続していました。

全顎抜歯の検討

その後、紆余曲折を経て我が家で引き取ることになりました。

家の中で暮らすことで口内環境も改善されることにわずかな望みをかけていましたが、そんな想いもむなしく悪化の一途をたどりました。

食欲の低下がみられ、よだれをたらし、前足で口元を掻くような動作を繰り返すようになりました。

痛み止めのステロイド剤も毎日服用しなければならない状態でした。

元々肥満気味ではありましたが、引き取ってからの一年間で体重が1.5kg程落ちてしまい、全顎抜歯をすることを決めました。

術後の経過

我が家の猫は当時15歳くらいと高齢なこともあり、自然に抜けていた歯も多かったようで13本の処置となりました。

術後は自ら食べることはなく、朝晩、総合栄養食タイプのちゅ~るを口元へもっていって根気よく食べさせていました。

水は全く飲もうとしないので、自宅点滴で水分補給をしていました。

そういう状態が10日以上続いたので、全抜歯したことを後悔しそうになっていた矢先、ようやく自らドライフードを少し口にしてくれました!12日目のことです。

それからは痛みの波はあるようでしたが、少しずつ食欲がもどっていきました。

ウェットフードが食べられるようになり、ひと月後にはドライフードも食べられるようになりました。

痛みが減ったのか活動的になり、ふたたび毛づくろいもするようになりました!

全顎抜歯してよかったと思うこと

我が家の猫の場合、完治はしませんでしたが、症状が軽くなり毎日飲ませていたステロイド剤を3日に1回へ減らすことができました。

何よりも、痛みが減ったことで猫自身が以前よりも楽な様子で過ごしていることがとてもうれしいです。

まとめ

かごの中で眠る猫

全抜歯にはリスクがありますが、最も効果の高い口内炎治療と言われています。

完治しない場合でも痛みを軽減できる可能性があります。

獣医師の経験に左右されるという側面もあるので、信頼できる獣医師に任せられるよう、病院選びは慎重に行いましょう!