猫がねずみを食べる・持ってくる理由は?注意するべき病気や対処法

ねずみを見つめる猫

飼い猫が突然「ねずみ」をくわえて目の前に持ってきたら、思わず大きな声を出すほど驚いてしまいますよね。

ねずみに限らず、猫は小鳥や虫などの「おみやげ」を持ってくる習性があり、度々驚かされます。

今回は、猫とねずみの関係性やねずみを持ってくる理由、猫がねずみを持ってきたときの対処法をご紹介します。

猫の心理を理解し、お互いに歩みよって生活をしていきましょう。

猫とねずみの歴史

黒板を見ている猫

猫は元々ねずみを食べて生きていた

猫とねずみの関係性を解説するためには、猫の祖先である「リビアヤマネコ」の存在が不可欠です。

リビアヤマネコは約13万年前に生息していた猫で、中東の砂漠を中心に生活をしていました。

猫は犬と違い、集団ではなく単独で狩りをする生き物です。リビアヤマネコの主食はねずみや小鳥であり、藪(やぶ)の中で獲物の動きをうかがいながら狩りをしていたと考えられています。

人間と出会う前から「ねずみの天敵は猫」であり、猫はねずみを捕食するための狩猟本能を持っていたのです。

人間が飼育するようになっても本能が抜けない

飼い主の足元にいる猫

野生で生息していたリビアヤマネコですが、約9,500年前から人間と共生していることがわかりました。この時代に作られた人間の墓の中に、ネコ科の動物が埋葬されていたのです。

日本で人と猫の歴史が始まったのは、約2,000年前の弥生時代とされています。

一説によると、「穀物を保護する生き物」として、ねずみやうさぎなど小動物を狩猟する役割を与えられていたのだとか。

猫は「小さい生き物をつい追いかけてしまう生き物」

人間と共存する中で家畜化されても、ヤマネコの「小さい生き物を追いかける本能」は抜けませんでした。なぜなら、狩猟本能は猫が生きていくために最も重要なものだったからです。

ペットとして飼育されるようになった今でも猫の本能は抜けず、小動物を追いかける習性があります。

この習性から、現在も「ねずみ取り」として役割を発揮している猫もいます。

現代の猫はねずみを狩りづらい

猫じゃらしで遊ぶ猫

昔と比べて、現代の猫はあまりねずみを狩る習慣がありません。理由は、「狩る必要がないため」です。

昔の猫は「食べるため・生きるため」にねずみを捕まえていましたが、ペットとして飼育されている現代の猫は基本的に食事に困ることがありません。温かい家の中で待っていれば、決まった時間にごはんが出てきます。

狩猟本能が完全になくなったわけではないため、小さい物が動くと「つい追いかける」ことはあっても、あくまで遊びや好奇心の範疇です。捕まえて殺したり捕食したりすることは少ないでしょう。

また、現代でもねずみにとって猫は天敵です。猫の鳴き声や臭いを察知したねずみは、自然とその場からいなくなり、戻ってこないといわれています。

猫がねずみを持ってくる理由

ねずみを目で追う猫

飼い主のごはんを持ってきている

猫は、犬のように飼い主のことを「ご主人様」とは思っていません。「ごはんをくれる同居人」や「世話の焼ける奴」のように思っています。

人間は狩りをしない生き物であるため、猫からすると「しっかり餌を食べられているのか」と心配されることもあります。

獲物が取れずにお腹を空かせていると思って、飼い主のごはんとしてねずみを持ってきてくれる場合があるのです。

狩りを教えようとしている

猫が「死にかけのねずみ」や「元気いっぱいのねずみ」を持ってくる場合は、人間に狩りを教えてくれようとしている可能性があります。

自分で最後までとどめを刺さないことで、飼い主に「狩りの方法・とどめを刺す感覚」を教えようとしているのです。

猫は「練習用の獲物は取ってきたから、後は自分でやってみなさい」と伝えているのでしょう。

褒めてほしいと思っている

猫の社会では父親の存在感はほぼなく、母猫と子猫で親子のコミュニティが形成されています。

猫が飼い主を母親のような存在として認識している場合、「ちゃんと狩りができたよ!どう?褒めて!」という気持ちでねずみを持ってきている可能性があります。

特に死んだねずみを飼い主の目の前でポトンと落とし、いわゆる「ドヤ顔」をしている場合は褒めてもらいたい傾向が強いでしょう。

獲物を安全な場所に置きたい

猫は獲物を狩ったとき、安全な場所でゆっくり食べたいと思うことがあります。

飼い主のそばを安全地帯だと認識している場合は、「餌の保管場所」として使っている可能性があるでしょう。

少し寂しさを感じるかもしれませんが、猫に信頼をされていると思えば可愛く思えますよね。

ねずみが原因で感染する猫の病気

獣医師に注射を打たれる猫

トキソプラズマ症

トキソプラズマ症は、トキソプラズマ原虫という寄生生物に侵入されたねずみを捕食することで感染します。

主に子猫が発症し、食欲不振・発熱・嘔吐・下痢・腹水などの症状が現れます。

症状はいつまでも続いたり再発を繰りかえしたりすることが多く、心筋障害や貧血などを併発することもあります。

エキノコックス症

狐による人畜共通感染症のイメージが強いエキノコックス症ですが、猫がねずみを捕食することでも感染する可能性があります。

エキノコックスという寄生虫によって引き起こされる感染症で、猫の場合はほとんど無症状であることが特徴です。

しかし猫を通じて人間に感染すると、肝臓に病巣を作り死に至る可能性もある病気です。

昨今は人との接触が少ない野生の狐よりも、人間との距離が近い猫からの感染が危険視されています。

ネコ条虫症

ネコ条虫症は、一般的には「サナダムシ」と呼ばれることが多い「条虫」という寄生虫により引き起こされる感染症です。

感染すると栄養素が条虫に奪われてしまい、下痢や食欲不振の症状が現れることが特徴です。食べてもどんどん痩せてしまう状態から判明するケースが多いでしょう。

また、肛門から紐のような寄生虫が出ていたり、ベッドに米粒のようなものが落ちていたりすることで条虫を発見するケースもあります。

病院で駆除薬を処方してもらい、治療を受けましょう。

殺鼠(さっそ)剤中毒

ねずみを殺す殺鼠剤中毒には、ワルファリンという「血をサラサラにする薬」が使われています。

「殺鼠剤入りのものを食べたねずみ」を猫が捕食するとワルファリンを摂取してしまい、正常な血液凝固が妨げられ出血が止まらなくなります。命にかかわるため、一刻も早い処置が必要です。

殺鼠剤中毒(ワルファリン中毒)になると、皮膚だけでなく歯茎や眼からも出血を起こします。呼吸が乱れぐったりとするような重症時には、入院が必須です。症状によっては輸血も必要となるでしょう。

飼い猫がねずみを持ってきた・食べたときにするべき行動

ベッドに座っている猫

騒がずにそっと片付ける

猫がねずみを持ってきた場合、ねずみの生死にかかわらず、騒がずにそっと片付けることが大切です。

驚きのあまりつい大きな声をあげたくなるところですが、飼い主が騒ぐと猫は「なんだか楽しそう!喜んでくれたのかな?」と勘違いしてしまいます。

猫がトイレやごはんに行っている間に黙って片付けましょう。

動物病院を受診する

寄生虫や感染症は、素人目には判断できないものが多いでしょう。

不安があれば自己判断はせず、動物病院を受診してください。

また、受診の際に猫が持ってきたねずみや猫のうんちを持参すると、診察がスムーズになります。

消毒をして人への感染に注意する

猫が持ってきたねずみは、エキノコックス症をはじめとする人畜共通感染症に感染している危険性があります。

ねずみが置かれた場所やその周辺を、徹底的に消毒するよう努めてください。

また、消毒薬に強い寄生虫も存在するため、可能であれば熱湯消毒もしましょう。

他のペットや小さい子供がいる場合は、床を舐めないようにする工夫も必要です。

猫がねずみを食べないようにするためにできること

正面を向いている猫

猫がねずみを食べないようにするために、飼い主ができることをご紹介します。

猫が私たちの目から離れて生活をしている限り(お留守番を含め)、ねずみの捕食を完全に防ぐことはできません。

予防に努めた上で、それでも不安を感じた場合は動物病院を受診しましょう。

十分な量のフードを与える

猫が満腹感を得ていれば、捕食のためにねずみを狩ることはほとんどありません。

狩る場合もあくまで本能に基づいた狩猟行為であり、食べる可能性は低いでしょう。

猫が空腹状態にならないように、十分な量のフードを与えてください。

十分な運動量を確保する

猫は適切な運動量が足りていない場合、フラストレーションがたまって狩猟本能が強まります。

普段から十分な運動量を確保することで、狩猟本能を抑えられるでしょう。

飼い主が率先して遊びに誘うだけでなく、キャットタワーやおもちゃを準備して「猫が一人でも遊べる環境」を作ることをおすすめします。

また、遊ぶ際は緩急を付けたり物陰から飛びだしたりして猫の好奇心を刺激すると、欲求が満たされ捕食防止になるでしょう。

ねずみが侵入する経路を塞ぐ

草むらに潜むねずみ

家の中にねずみを招かないようにするために、侵入経路を塞ぎましょう。

ねずみは外敵から身を守れるよう「静かで暗い安全な場所」を好みます。

家の中での主な侵入経路は、劣化した壁の穴・屋根の隙間・下水管・換気扇・エアコンのホースなどです。僅か数cmの隙間からでも侵入してしまうため、家全体を確認して経路を塞ぎましょう。

ガレージや物置がある家の場合は、トタンの外壁を伝い侵入される可能性もあります。

雨戸の戸袋や庭も、鼠穴がないかどうか細かく確認しましょう。

ねずみが通りそうな道に粘着テープや捕獲機を設置するのも、一つの手段です。

完全室内飼育にする

昔と比べると、室内にねずみが入ってくる可能性は高くありません。

猫を完全室内飼いにすることで、ねずみとの接触を減らし、捕食を防止できます。

今まで外飼い・半室内外で飼育していた人は、この機会に猫を外に出さない環境を作りましょう。

完全室内飼いは、ねずみの捕食防止だけではなく、他の感染症や事故の予防にもなります。

まとめ

ぬいぐるみを抱いて眠る猫

今回は猫とねずみの関係性や、ねずみの捕食についてご紹介しました。

猫とねずみは、人間が猫と共生する前から捕食の関係があります。

猫の本能や心理を理解した上で、お互いに住み心地がよい生活を目指しましょう。