【日本ペット歯みがき普及協会】ペットのための歯みがきコラム⑥ペットの歯周病予防のために唾液腺マッサージを活用

犬と猫
日本ペット歯みがき普及協会

「歯ミガキマン」として日本中をかけまわり、これまで9都道府県40回以上、累計頭数1,000頭以上のペットたちの歯みがきを指導する歯みがき教室を開催し、毎回歯みがき教室は満席・リピーターが絶えない『赤津先生』やかまくらげんき動物病院で院長もつとめる『石野先生』、動物の行動と心理を専門とするヒューマン・ドッグトレーナー『須﨑先生』にペットの歯みがき初心者でもできる大事なことをシリーズで教えてもらいます。

6回目の今回は、石野先生が担当してくれます。

「8020(ハチマルニマル)」運動と「1530(イチゴサンマル)」運動

歯みがきをする一家

皆さんは、「8020(ハチマルニマル)」運動をご存じでしょうか?

「8020(ハチマルニマル)」運動とは、1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。

日本ペット歯みがき普及協会でも、ヒトの「8020(ハチマルニマル)運動」にならって、「1530(イチゴサンマル)運動」を提唱しています。

「1530(イチゴサンマル)」とは、「15歳までに30本以上の歯を残そう」ということです。犬猫の平均寿命が15歳を超えている現在においては、30本以上の歯を残すことは健康寿命を延長するために重要なことです。

「犬はフードを飲み込んじゃうから、歯はなくても大丈夫」なんていうことを言う方もいらっしゃいますが、実際には、歯が綺麗でたくさん残っている犬猫は元気で長生きですし、認知症の発生も少ないように感じます。

犬猫は、虫歯より歯周病の発生が圧倒的に多いですが、歯周病の予防に大切なのは、歯みがきです。歯みがきで歯垢を除去する「プラークコントロール」が重要です。

しかし、犬猫に朝晩正しく歯みがきをしている飼主の方の割合はとても少ないです。

犬猫の協力が得られず朝晩の歯みがきができないケースや、歯みがきの仕方が悪く、正しい歯みがきができなくて犬猫の歯みがきをあきらめているケースは少なくありません。

そこで、日本ペット歯みがき普及協会は、簡単に誰でもできる犬猫のための「歯周病予防の唾液腺マッサージ」を推奨しています。

歯周病予防の唾液腺マッサージの前に「唾液の重要性」

ヨダレを垂らす犬

唾液には、洗浄作用、殺菌作用、pH緩衝作用、再石灰化作用、嚥下作用、潤滑作用、味覚促進作用などがあります。

特に洗浄作用、殺菌作用、pH緩衝作用は歯周病予防に大きな役割を果たしています。

例えば、大型犬は小型犬に比べて歯周病になりにくいことが知られています。それは、大型犬は小型犬に比べて唾液の分泌量が多く、唾液が歯垢を洗い流すことで歯周病を防いでくれているからです。

また、大量の唾液により口腔内を殺菌することで、病原性歯周病菌の繁殖を抑制し、さらに、唾液は口腔内のpHを緩衝し、口腔内環境を正常に保つ働きをしています。

つまり唾液をたくさん分泌させることで、歯周病の発生をある程度防ぐことができるのです。

ヒトの場合、唾液を分泌させるには、食事をゆっくりとよく噛んで食べたり、梅干しのような酸っぱい食品をイメージしながら食べればよいですが、犬猫にはいかがでしょうか?

私が飼育しているプードルは、1回の食事を30秒もかからずに完食してしまいます。つまり、犬猫にはこれらの方法で唾液の分泌を促進することはできません。また、犬猫の前にフードを置いて、1時間程度、「マテ!」をする方法も考えましたが、毎日2回の食事の都度に、この方法を用いるのはかえって手間がかかってしまいそうですね。

ですので、犬猫に唾液腺マッサージをして、唾液をたくさん出してもらいましょう。

唾液腺分泌促進のための「唾液腺マッサージ」のやり方

マッサージの前に、唾液腺のことを少し知っておきましょう。

ご存じのように、ヒトも犬猫も唾液腺は4つ(対)あります。頬骨腺、耳下腺、下顎腺(ヒトの場合は顎下腺)、舌下腺)です。

また、各唾液腺の開口部ですが、上顎の第4前臼歯のところと下顎の犬歯の後ろにあります。

そして、各唾液腺と唾液腺の開口部は導管とよばれる管でつながっています。


■犬の唾液腺(左図)と猫の唾液腺(右図)

「唾液腺マッサージ」を始める前には、この4つの唾液腺と唾液腺の開口部の位置関係を良くイメージできるようにしてください。

1. お口の周りを触れるように慣らす

唾液腺マッサージを始める前に、犬猫のお口の周りを触れるように慣らしておきましょう。

チワワ
■まずは、お口の周りを触れるようにしておくことが大事です。

お口を触らせてくれたら、ご褒美をあげたり、褒めてあげると効果的です。

2. 上下の唾液腺の開口部を開く

唾液腺の開口部(出口)は上下に1対ずつあります。唾液腺をマッサージして、いくら唾液がたくさん分泌したとしても、肝心の唾液腺の出口が開いていないと唾液は渋滞を起こしてしまい、分泌されにくくなってしまいます。

そこで、唾液腺マッサージを行う前には必ず唾液腺の出口を開いておかなければなりません。

上の唾液腺の出口は、上の犬歯の後ろから4番目にある大きな歯(第4前臼歯)のところにありますので、唇の上から指先を使って円を描くように優しくマッサージしましょう。

チワワ
■唇の上から指先を使って円を描くように優しくマッサージ。

下の唾液腺の出口は、舌の犬歯の後方にありますので、ここは下顎の皮膚の上から、指先を使って円を描くようにマッサージします。

上下各20~30回程度、行ってください。

3. 頬骨腺のマッサージをする

チワワ

次に、親指以外の4本の指で、お顔をホールドして、左右の親指で、頬にある胸骨線を優しく円を描くようにマッサージします。

この時、指先では胸骨線を触知することはできませんが、指先に胸骨線があることをイメージしてマッサージすることが大切です。

左右各20~30回程度、行ってください。

4. 耳下腺のマッサージをする

チワワ

耳下腺は、耳の付け根、耳根部にあります。親指と人差し指、中指で耳根部を挟むようにゆっくりと優しくモミモミしましょう。

左右各20~30回程度、行ってください。

5. 下顎腺のマッサージをする

チワワ

下顎の鰓(エラ)の下に相当する部位にあるのが下顎腺です。親指と人差し指、中指を用いて下顎の下にある下顎腺を皮膚ごとモミモミとマッサージしていきます。

左右各20~30回程度、行ってください。

6. 舌下腺のマッサージをする

チワワ

舌下腺は下の付け根の奥の方にありますので、直接触ることはできません。また、ちょうど喉元にあたるので、力を入れすぎてマッサージすると苦しくなってしまうこともありますので、犬猫の喉元の皮膚をつまむように引っ張ってマッサージするとよいでしょう。

20~30回程度、行ってください。

7. 唾液を出口の方向に向かって排出する

チワワ

最後に、それぞれの唾液腺と唾液腺の開口部を結んでいる導管をマッサージして、導管の中を流れている唾液を出口の方向に向かって排出するようにします。

犬猫のお顔に左右の掌をあてて、後ろから前に向かってストロークマッサージを行います。

20~30回程度、行ってください。

以上が犬猫の「口腔ケアのための唾液腺マッサージ」になります。

1日2回、1回3分間、毎食後に実践してみてください。

なお、犬猫の「口腔ケアのための唾液腺マッサージ」は、日本ペット歯みがき普及協会のYouTube動画で見ることができます。


引用元:歯ミガキマン チャンネル(口腔ケアのための唾液腺マッサージ)

まとめ

本来は、歯みがきの後にマッサージを行うと効果的ですが、歯みがきのできない子には、まずは歯周病予防マッサージだけでも実践してみてください。

また、本マッサージはお口を触られることにも慣れてくるので、段階的に歯みがきができるように目的をたてて行うとよいでしょう。

皆さんも唾液腺マッサージを活用して、「1530(イチゴサンマル)」を目指し、そして歯周病で歯を失う犬猫がゼロになるように、一緒に歯みがき普及活動にご協力ください。

次回・最終回は、ヒューマン・ドッグトレーナーの須崎先生から「ペットと人の真の共生生活実現について・ペットと人が暮らす素晴らしさ」をご紹介します。お楽しみに待っていてください。

赤津先生赤津 徳彦(あかつ とくひこ)
(一社)日本ペット歯みがき普及協会代表理事
全国各地で「歯ミガキマン」として活動
石野先生石野 孝(いしの たかし)
(一社)日本ペット歯みがき普及協会理事
《かまくらげんき動物病院/院長》

(一社)日本ペット歯みがき普及協会

設立:令和3年11月8日
事業内容:ペットの口腔ケアに関する知識・技術の普及、施術士の育成及び講習会の開催、施術士の技術基準の策定、公表及び資格認定、動物愛護精神の更なる啓蒙※一部抜粋
HP:https://jpd-a.or.jp/

記事提供:一般社団法人 日本ペット歯みがき普及協会