• HOME
  • エッセイ
  • わたしがショックを受けた、昔の獣医さんエピソード

わたしがショックを受けた、昔の獣医さんエピソード

エッセイ

愛犬家にとって、犬の健康は一番大事な問題ですよね。

いつの時代も、愛犬家たちは、家族の一員である犬に元気で長生きしてほしいと願うものです。

獣医学が進歩した現代は、犬の平均寿命は2桁まで延びました。

わが家で飼っていた大型犬も、11~16年という長寿を全うするようになっています。

それに比べて、昔の犬たちはあまり長生きすることができませんでした。

それは、獣医学未発達で、まだ未知の分野だったから、ということもありますが、もうひとつ、わたしは、現代のような優秀な獣医さんが少なかったことも原因だと思っています。

もちろん、赤ひげ先生のような、腕も良く人間性も優れた獣医さんは昔もいたと思いますが…。

昔は、犬や猫のようなペットより、牛や馬などの家畜が大事にされていました。

ペット文化では先進国であるあの英国でも、昔の獣医学において動物の優先順位は、ウマ・ウシ・ヒツジ・ブタ・イヌだったそうです。

それはさておき、科学の進歩は、人間だけでなく、犬や猫などのペットたちにも確実に恩恵をもたらしてくれました。

同時に、たくさんの優秀な獣医さんを輩出するようになりました。

昔の獣医さんが今の獣医学界の現状を知ったら、目を丸くすることでしょう。

今回は、わたしがショックを受けた獣医さんにまつわるエピソードを2つご紹介したいと思います。昔のわたしの体験談で、実際にあったお話です。

今、わたしたちの周りにいる獣医さんと比べてみてください。

今という時代が、ペットだけでなくペットオーナーにとってもどれだけ恵まれているかがお分かりいただけると思います。

五十数年前のフィラリアの話

最初のエピソードは、わたしが小学生の頃の話です。

当時、わが家には、最年長のタロその奥さんのチーコ、そして娘のリンリンという3匹のスピッツがいました。

そのうちタロリンリンがゴホゴホと咳をし出したのは、ちょうど、「フィラリア」という病名が愛犬家達の話題にのぼるようになった頃でした。

ご近所で飼っている犬もフィラリアだということで、そこに往診に来ている獣医さんに、わが家の犬達も診てもらうことになりました。

診断の結果、やはりフィラリアにかかっているということで、週に何回か注射を打ちに往診していただくことになりました。

当時は、フィラリアの予防薬はまだ開発されておらず、注射で駆除をするしかなかったのです。

ある日のことです。往診でやって来た獣医さんに、母が

「チーコにも注射を打った方がいいでしょうか?」

とたずねました。その時チーコにはまだ何の症状も出ていませんでしたが、フィラリアは感染症です。一緒に暮らしているタロとリンリンが感染しているとしたら、チーコも、ほぼ100パーセントの確率でフィラリアにかかっていると考えられました。

獣医さんは、そうですね、というと、すぐにチーコに注射を打ちました。

その直後、チーコに異変が起こりました。チーコは、注射が終わっても、白目をむいたまま、動こうとしませんでした。見ると、チーコ舌の色が見る見る白くなっていきます。

「チーコの様子が変だ!」

というわたしの叫び声に、獣医さんは、しまった、といったような顔をしました。

そして、「先に強心剤を打つのを忘れた」とボソリと言ったのです。

当時、フィラリアの注射は、先に強心剤を打ってからしなければなりませんでした。

フィラリアの注射を打つと、心臓に住みついているフィラリアの成虫が暴れ出して、そのショックで急性心臓死を招くことが多々あったからです。

獣医さんは、チーコにだけその強心剤を打つのを忘れてしまったのです。

獣医さんは悪びれる様子もなく、子供心に大変なショックを受けました。

愛犬が想像妊娠?いや帝王切開……!

もうひとつのエピソードは、それからずーっと後になります。

今から30年ほど前のことです。ちょうど大型犬のブームがやってこようとしていた頃でした。

その頃にはすでにフィラリアの予防薬やワクチンも普及していて、動物病院や獣医院の数も増えていました。

当時、わたしたち夫婦はジャーマン・シェパード犬を飼っていたのですが、これはそのシェパードに赤ちゃんができた時の話です。

あれは5月のことでした。3月にしたお見合が成功したらしく、シェパードのお腹が大きくなってきて、おっぱいも膨らんできました。

出産予定日を計算して、毎日、その日が近づいてくるのを楽しみにしていたのですが、どうしたことか、予定日が近づいても、ちっとも陣痛がはじまる気配がないのです。

そこで、一度獣医さんに診てもらおう、と、当時予防注射やワクチンでかかったことのある獣医さんに相談したところ、なんと、

「わたし、大型犬、苦手なんですよ。ほかの獣医さんのところで診てもらってください」

と言われてしまいました…。

仕方がないので、急いで次の獣医さんを探していたら、友人が、シェパードの診断に慣れているところがいいだろう、と、盲導犬協会に出入りしている獣医さんを探し出してくれました。

それならば大丈夫だろう、と連れていって診ていただいた結果、

赤ちゃんがいることは確かなようですね、

との診断。

初産は遅れることもあるので、陣痛促進剤を打って様子をみてみましょう、ということになりました。

しかし、、、

陣痛促進剤を打っても変化なし。
予定日を過ぎてもまったく陣痛がはじまる気配なし。

再び、その獣医さんのところへ連れていったところ、なんと、その獣医さんから

「想像妊娠かもしれませんねえ」。

と言われてしまいました。

しかし、赤ちゃんが絶対にいる!と感じたわたしたち夫婦は、別の人から紹介してもらった動物病院へ駆け込みました。

その時、出産予定日から数日ほど遅れていました。

「犬の場合はすごいスピードで胎児が成長するから、ぐすぐずしていられないよ!」

犬の妊娠期間は9週間
十月十日の人間と違って、日々どんどん胎児は大きくなっているとのことでした。

院長はすぐに超音波で母犬のお腹の中をみてくれました。

そうしたら、いました!いました!4頭も!

喜んだのもつかの間、胎児たちはかなり大きくなっていて、これ以上待っていたら母子ともども危ない、ということで、そのまますぐ帝王切開で取り出すことになりました。

生まれるまでに色々ありましたが、愛らしい、しかしちょっぴりビッグな子犬といっしょに母犬も無事にもどってきて、めでたしめでたしとなりました。

まとめ

いかがでしたか?昔はこんなこともありましたが、今は、技術と人間性共に優秀な獣医さんが増えて、本当にありがたいと思います。

20年ほど前に、愛犬の闘病生活でお世話になった獣医院の副院長をしていた獣医さんがこうおっしゃいました。

ぼくたち獣医は、治療をする時に、どうしても犬や動物のことばっかり考えてしまうんです。
でも、いつも院長に、「犬を治療するのは当たり前。だが、動物と同じように飼い主の心のケアをするのも獣医の大切な仕事だということを忘れてはならん」っていわれるんですよね。

これは、獣医さんのことを語ったり思ったりする時に、必ず、思いだされる言葉です。

病気や怪我に苦しむ愛犬を抱えている飼い主の心は、ともすればボロボロになってしまいます。

その時に親身になって相談にのってくれる獣医さんの存在は心の大きな支えになります。

昨今、ペットも高齢化が進んで介護といった問題がクローズアップされてきています。

わたしたち夫婦も、大型犬の介護に汗と涙を流した日々を送ったことがありますが、あの時、獣医さんの存在がどれほど大きく感じられたことでしょう。

そんな、ペットのみならず、飼い主の心に寄り添ってくれる獣医さんが、これからもどんどん増えることを願っています。




関連記事一覧